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大宅壮一は「最後のエリートが死んでしまった」といった。

 渋沢敬三が死んだとき、大宅はそう言ったんだそうだ。

 『渋沢家三代』(文春新書/佐野眞一著)は、栄一・篤二・敬三という渋沢家三代の物語だ。

 近代日本資本主義の名プロモーター栄一、放蕩のすえ廃嫡されたあとも趣味に生きた篤二、日銀総裁や大蔵大臣を歴任しながらも学問の世界に多大なる貢献をした敬三。佐野さんは『巨怪伝』などの分厚い評伝をたくさんかいている人だから、その魅力を新書サイズに収めるのにはまた別の苦労があったとおもう。そのおかげで、気軽にこの本を読むことができてうれしい。
 
 戦後、財閥解体のなかで、渋沢「財閥」も解体されるが、じつは解体されるほどの財をもっていなかった渋沢家は、「没落」する。敬三はしかし、率先してその処分をうけるんだ。佐野さんはその敬三の決断を「平気で没落できる男の強い自負が感じられる」と書く。印象深い記述だ。
 
 栄一は渋沢家の分家の出で、本家からは澁澤龍彦がでているということも、澁澤を一冊しか読んだことがないぼくは初めて知ったんだけど、競馬評論家の大川慶次郎が渋沢一族の出だってこともぜんぜん知らなかった。

 ということで、次に読む本がきまった。

 『絶筆 大川慶次郎』(ザテレビジョン文庫/大川慶次郎著)にしよう。
# by taikutuotoko | 2004-06-12 18:19 | 本・雑誌・新聞・書店

観察するひとびと。

 仕事でトラブルがあったりしたけど、まぁ一冊読んだよ。

 『建築探偵の冒険・東京篇』(ちくま文庫/藤森照信著)。

 「東京を私造したかった人の伝 ― 兜町と田園調布」っていう章には建築パトロンとしての渋沢栄一が主人公として登場するんだけど、渋沢ってひとは興味深いな。と思って、未読本のダンボールのなかに『渋沢家三代』(文春新書/佐野眞一著)があることを思い出した。つぎ読むのは決まりだ。
 
 本は、とりあえず興味をもったらすぐに読む予定がなくても、買っておくべきなんだよね。手元にありさえすれば、しぜんと読む日がくるんだ。興味と知識がつながっていく愉しさ、おどろきが、読書の醍醐味だとおもうなぁ。

 藤森さんといえば、路上観察学会。南さんや赤瀬川さん荒俣さん、そして忘れてはいけない編集者の松田哲夫さんなんかの、グループだよね。ちくま文庫の魅力のひとつだ。その父ともいえる今和次郎については、ちくま学芸文庫から川添登『今和次郎 ― その考現学』(買ったけどまだ読んでないんだ)が出たし、もちろん『考現学入門』(ちくま文庫)は驚きの一冊だねぇ。
# by taikutuotoko | 2004-06-12 02:17 | 本・雑誌・新聞・書店

母はダイナマイトで・・・。という人の本はスゴイ・スエイ。

 とても厚くて(約5センチ)、枕元でゆっくり読むつもりの本。

 『絶対毎日スエイ日記』(アートン/末井昭著/神蔵美子写真)

 ミスター白夜書房といっていい末井昭さんの、WEB日記の単行本化。赤瀬川原平さんの『ゼロ発信』(中公文庫)を読んでから、どうぞ。末井さんの本では、ちくま文庫の『素敵なダイナマイトスキャンダル』が、すごい。

 さいきん本好きの間で話題になったといえば、第一回「本屋大賞」だろう。大賞には小川洋子さんの『博士の愛した数式』がえらばれた。ぼくもこの本は読んだし、いい小説だと思う。なにより、安心してひとに薦められる本だろう。 
 だけど、上位の本のラインナップをみると、ぼくはこんなふうに思ってしまう。
 「あの役者、いいよねぇ」っていわれるような俳優ばかりが何人もでているのに、なぜか画面に緊張感のない映画。ひとりひとりの演技はわるくないのに、全体としてはスカスカの印象をもってしまう映画。
 それぞれの本はいい本なんだろうけど、書店で本屋大賞フェアをやっているのを見たとき、なんだか面白みに欠けるんだよなぁ。
# by taikutuotoko | 2004-06-11 02:31 | 本・雑誌・新聞・書店