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赤瀬川原平の妄想力。

 赤瀬川原平さんのエッセイって、どうしてこんなにおもしろいのだろう。

 『妄想映画館』(駸々堂出版/赤瀬川原平著)
を読んだ。『キネマ旬報』に連載されていたものをまとめた本で、一九八四年に出ている。出版元は、倒産した駸々堂書店のかんけいかな。

 この本(連載)、さいしょは
 『桜画報大全』(新潮文庫)
のような調子の、イラストをまじえた、映画のパロディという感じで(泰平小僧も登場)、「妄想映画館」館長の赤瀬川さんが、ここにかかる妄想映画を紹介する、といった内容だったのだけれど、だんだんに変化していき、途中からは、映画エッセイ、映画評という感じにおちつく。
 
 赤瀬川さんの文章の、なんともいえないおかしさや、ギラッとはしていないのにするどい切れ味、というものを味わうには、後半の方がいいかもしれない。

 また、野球エッセイ・コレクターのぼくにとっては、「環境を守る映画を」という、なんともおかしい野球エッセイを拾えたのがうれしかった。「環境を守る映画を」がどうして野球エッセイなんだ?とおもわれるかもしれないが、そうなんだからしかたない。ちなみにこのときは、赤瀬川さんのすきなジャイアンツではなく、ドラゴンズが優勝している。これがヒント。

 〈ところで「007/ムーンレイカー」は、当然ながら常識的でつまらなかった。だけどお金をかけた分だけは、キチンと物を壊して見せていた。そのことだけはよくわかる映画だった。まるで領収書のような映画だった。〉
とか
 〈あまり全幅の信頼をもって観るのは映画のためによくない。〉
とか
 〈面白いというのは「スター・ウォーズ」の特徴である。〉
といういい方が、赤瀬川さんらしくて、ぼくはすきだな。

 『妄想映画館』は絶版だけど、ことし出たばかりの
 『嘘つき映画館シネマほらセット』(河出書房新社/橋本治著)
は、おなじく『キネマ旬報』の連載。タイトルどおり、橋本さんの「ほら映画」が愉しいぞ。
by taikutuotoko | 2004-09-02 20:29 | 本・雑誌・新聞・書店


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