金子光晴、壮絶エロ語り。

 詩人・金子光晴さんのいくつかの放浪記(でいいのかな?)を、読みたい読みたいとおもっていながら、けっきょく読まないできてしまった。
 『絶望の精神史』(講談社文芸文庫)
くらいしか、読んだことがなかったのだ。
 
 そんなぼくでも、こんな怪著にであうことができるなんて。
   
 『金花黒薔薇艸紙』(小学館文庫/金子光晴〔述〕・桜井滋人〔聞き書き〕著)
を読んだ。読みは「きんかくろばらぞうし」。昭和四十九年七月から一年間、『週刊ポスト』に連載されていたもので、昭和五十年に単行本がでているが、金子さんが亡くなったのも、この年だ。

 で、内容は、というと……これがめちゃくちゃな、エロばなし。八十くらいの爺さんなわけだけど。
 
 あまり差し障りないところだと…、金子さんのところに、この連載を読んだのだろうひとから、脅迫状がとどくんだけど、これが
 「…もうチンポも立たねえ耄碌爺を殺しても、何の益もねえから、見逃してやるが…」
うんぬん、という内容。
 
 で。

 「…チンポにまで言及されちゃあ、カッとくるよ、うん。チンポのことじゃぁぼくも随分と悩んでるからね。」 
 「思わずカッときて、本当に慈悲も情けもねえ奴だと、四、五日ムカムカしてたんだが、そのうち寂しくなっちゃってねぇ、庭など生まれてこの方、見たこともねぇぼくが、昨日などは、庭にしゃがんでね、空ゆく雲を眺めていたの。あのね、空を見上げて考えていたの。何とかして、あの姓名不詳の糞ったれをくやしがらせてやる手はねえもんかとね。うん、本当に、おのしは、いいときに来てくれた……何をぼんやりしてんだ、おのし、うん?ぼくはね、あのね、おのしの顔を見たとたん、決心がついたんだよ、何を?決まってるじゃぁないか、淫本を書こうと決めたんだ、ぼくはッ。(聞き書き人、心の中で独白――そんなにあたしは助平そうな顔してるかしら)」 

 ちょっと、引用するにもまずいようなところばっかりなので、安全で、それでいてこの本のおかしさが伝わりそうなところをえらんでみたんだけど、わらっちゃうでしょう。また、この聞き書きの桜井さんとのコンビがじつによくってね。いやもう、すさまじい本ですよ、これは。

 ぼくが八月にとりあげた本で、いちばんおすすめしたかった本は
 『ふるさとは貧民窟なりき』(ちくま文庫/小板橋二郎著)
なんだけど(いちばん好きとか、いちばんおもしろい、というわけではかならずしもなくて、いちばんおすすめ、ということ)、九月の最おすすめ本の有力候補だな、これは。まだ一日だけどさ。 
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by taikutuotoko | 2004-09-01 22:45 | 本・雑誌・新聞・書店


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