法事(一周忌)で実家に帰っていた。
祖母の遺品を整理したら出てきた、という祖父(故人・大正生まれ)の若いころの写真がなかなかおもしろかった。大阪の商家で働いていたこともあったからか、モダンボーイという感じ。田舎ぐらしの後年もなかなかの洒落者だった。写真館で撮ったと思われる一枚は髪型、眼鏡にスーツがばっちりきまっていて、なんの職業だろうかと思わせるが、このひともいろいろあって最後は自宅でひとり旋盤工をしていた。仕事がおわると作業着からスーツやら着物に着替えて趣味にとりかかる。母親は芸者さんだったそうだ。
これはスキーをしている写真だが、よく見るとステッキが竹で出来ている。野球大会で優勝したときの一枚もある。

祖母のものでは、あれはなんていうのか紡織機?縦横でパタパタさせて織っていく機械で服をつくるのが趣味だったが、その設計図というのかデザイン画を書き込んだ方眼紙に筆記体の英語の走り書きがたくさんしてあったのが意外だった。一度倒れるまではもっと頭がはっきりしていたのだと聞かされていたが、筆記体で綴れるひとだったんだねぇ。そうは見えなかったけどもなぁ。長く生きたらいくらでも意外なことが隠れているもんだ。
お寺の廊下の壁は本棚になっていて、ずらーっと沢山の本がならんでいる。仏教関係だけでなく、歴史や哲学、医療、文学にノンフィクションと揃っている。古い本にラベルが付いているのは、図書館がまだ整備されてないころ、市民に貸し出しをしていたからとのこと。いまでも檀家にはご自由に御覧くださいとの通信がくる。渋めの絶版文庫に心動かされ、思わず「帳場はどこかしら」なんて。なぜだかミッキー安川の本が数冊あった。
御斎のときに住職が「檀家にも本屋があるからそこで注文すべきなんだけど、やっぱりアマゾンを使ってしまうのですよ」と言い、それにしてもあの数円で買えてしまう中古本はどうなっているのかと首をひねっていたのがおもしろい。