編集者についての本を読んだばかりなので、それに関係するのを一冊。
『まことに残念ですが… 不朽の名作への「不採用通知」160選』(徳間文庫/アンドレ・バーナード編著/木原武一監修/中原裕子訳)
なんとも親切なタイトルで、もうそのまんま。海外の小説にまったく疎いぼくには、このなかにでてくる作品たちがどのくらい名作なのかはよくわからないけれど、そのぼくでも知っているような作品も、すんなり世に出たわけではなかった。けっこうつめたい言葉のかかれた断り状を送られたりしているんだねぇ。出版社、ということはつまり編集者が、「見込みなし」と判定した、のちの「名作」たち。結果的にはその編集者は大失敗、ってことになるんだろうけど、かわいそうではあるね。
たとえば
パール・バック『大地』~「まことに残念ですが、アメリカの読者は中国のことなど一切興味がありません」
コナン・ドイル『緋色の研究』(これはさすがに読んだ)~「連載するには短かすぎ、読み切り物としては長すぎる」
コンラート・ローレンツ『人イヌにあう』~「……あえて翻訳出版してまで、注目を浴びようと吠えたてる多くの犬の本と競争させるだけの価値はない」
バーナード・マラマッド『アシスタント』~「深みも、説得力もなく、どこからどう見ても、駄作。批評家に受けるとも、十分な販売利益をあげるとも考えられない。読めば読むほど憂鬱になる」
バーナード・ショー『不合理なきずな』~「もっとも腹立たしい類の小説。この本の思想はすべて間違っとる。どこもかしこも奇異で、ひねくれており、未熟である。これはまったく何もわかっとらんやつが人生訓をたれた作品だ」
その他、『白鯨』『ノーサンガー寺院』『キャッチ=22』『アンネの日記』などなど。
うーん、もしかしたら、この世でもっともすばらしい小説は、出版社からつきかえされていまは机のひきだしに眠っている、のかもしれない。