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大宅壮一は「最後のエリートが死んでしまった」といった。

 渋沢敬三が死んだとき、大宅はそう言ったんだそうだ。

 『渋沢家三代』(文春新書/佐野眞一著)は、栄一・篤二・敬三という渋沢家三代の物語だ。

 近代日本資本主義の名プロモーター栄一、放蕩のすえ廃嫡されたあとも趣味に生きた篤二、日銀総裁や大蔵大臣を歴任しながらも学問の世界に多大なる貢献をした敬三。佐野さんは『巨怪伝』などの分厚い評伝をたくさんかいている人だから、その魅力を新書サイズに収めるのにはまた別の苦労があったとおもう。そのおかげで、気軽にこの本を読むことができてうれしい。
 
 戦後、財閥解体のなかで、渋沢「財閥」も解体されるが、じつは解体されるほどの財をもっていなかった渋沢家は、「没落」する。敬三はしかし、率先してその処分をうけるんだ。佐野さんはその敬三の決断を「平気で没落できる男の強い自負が感じられる」と書く。印象深い記述だ。
 
 栄一は渋沢家の分家の出で、本家からは澁澤龍彦がでているということも、澁澤を一冊しか読んだことがないぼくは初めて知ったんだけど、競馬評論家の大川慶次郎が渋沢一族の出だってこともぜんぜん知らなかった。

 ということで、次に読む本がきまった。

 『絶筆 大川慶次郎』(ザテレビジョン文庫/大川慶次郎著)にしよう。
by taikutuotoko | 2004-06-12 18:19 | 本・雑誌・新聞・書店


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