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日記の中の、「恐縮だが……」。

 飲み会で早朝に帰宅し、倒れるように寝た。昼に起きてブログを書き、さてもうひと眠り、というつもりが、眼を覚ますともう二二時だもの。ああ、せっかくの休みが、もったいない。

 そんな時間に起きたって、布団のなかでモゾモゾと読書するしかないわな。気楽なやつがイイ、と
 『野郎どもと女たち』(集英社文庫/村松友視著)
を読んだ。単行本が一九八四年、文庫が八八年刊。『時代屋の女房』で直木賞(八二年・上)を受賞した前後に書かれた〈他人に読ませる目的で書いた日記〉のような(雑誌連載の)エッセイ集だ。

 「あとがき」で、村松さんは〈私には内面の告白をする日記という世界に馴染まないところがあるらしい。〉と書いている。〈自分のために自分で書き記す日記〉は、習慣にない、と。

 この先がおもしろい。

 〈ところがある日、三島由紀夫の全集のうちの「日記篇」というやつを読んで、私は日記に対する認識を変えてしまった。三島由紀夫の日記のある日の書き出しは、それほどに鮮烈な印象を、私に与えたものだ。
 尾籠な話で恐縮だが……これが、その日記の書き出しだった。自分のために書き自分だけが読む日記の中で、この文章はどう考えても突飛だ。書き手はいったい、誰に対して恐縮しているのだろう。しかし、あの三島由紀夫の自意識と、「尾籠な話で恐縮だが」は、実によく似合っている。いや、むしろこの感覚こそが、三島由紀夫世界のまん真ん中かもしれない……そう思うと、この日記の書き出しは貴重な一行のような気さえしたものだった。〉 

 「文庫のためのあとがき」では、〈あらためて読み直してみると、ここに納められたエッセイを下敷にして、いかに多くの短篇小説や長篇小説を書いたかに、我ながらおどろいてしまった。〉と書いている。
by taikutuotoko | 2005-02-27 02:49 | 本・雑誌・新聞・書店


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