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びんぼう人が書いたびんぼう人の本をびんぼう人が読む。

 テレビ番組に『銭形金太郎』ってのがありますでしょう。ヤラセがあったなんていう記事も週刊誌にでたりしてるけど、けっこうな人気だ。滑稽だが明るい「ビンボーさん」を紹介する、という番組。

 『東京サイテー生活 家賃月2万円以下の人々』(太田出版/大泉実成著)
を読んだ。一九九〇年ころに『フロム・エー』に連載されたものの単行本で、一九九二年刊。これなんてそのままあの番組の企画書になるね。呼び方が「ビンボーさん」でなくて「サイテーニンゲン」であるが。

 〈自分の人生にテーマがある。サイテー生活的ポリシーがある。そのために二万円以下の部屋に棲み、やりたい放題に生きる。これがサイテーニンゲンである。〉 
 その「サイテーニンゲン」(若者中心だが、書家の老人、外国人も)たちのお部屋におじゃまして(見取図あり)、その暮らしぶりや夢などを語ってもらう、というもの。ちなみに謝礼は家賃ひと月分だ。

 掲載誌が『フロム・エー』だからあたりまえだが、しかし心から、とにかく愛すべき彼らを応援するぞ、それにしてもおかしい(ナイスな)奴らだ、といった感じの内容。
 わらって読みながら、ふと我が身をおもうと、彼らとたいしてかわらなかったり。ことしも旅行のひとつもせず、お酒呑むとき以外で外食に千円以上つかったことなく、閉店間際のスーパーの常連で、浮いた金でせっせせっせと本を買う日々であります。さすがに家賃二万はナイけどねぇ。

 しかし、みなよいキャラクターをしてる。夜の空をみるのが趣味で、学研の図鑑『宇宙』が「たからもの」だというある若い女性は、こう考えている。
 〈「老後は宇宙の研究をしよう。そのうちずっしりと重たい二万円ぐらいの双眼鏡を買おう。」〉
 うんうん。夜空の星たちも、「双眼鏡」で見える距離まで近づいてきてくれるよ、きっと。

 本書のさいごを飾るのが、大泉実成。そう、著者本人である。「サイテーニンゲン」歴一一年であった大泉さんも、結婚を機に、いっきに家賃一一万五千円のところに引っ越したとのこと。おお、目出度い。さすが「講談社ノンフィクション賞」をもらったひとはお金があるのね、とおもったら大間違い。

 ことしの七月に出た
 『文筆生活の現場 ライフワークとしてのノンフィクション』(中公新書ラクレ/石井政之編著)
の中で、大泉さんは
 「売上三一一万二二六三円をめぐる赤裸々な自問自答」
というのを書いている。妻子供もいるし、なんといってもノンフィクションは取材・資料費がかかるもの。生活費は月一〇万だ。

 それを聞くと心が痛む。この本買ったの、ブックオフだもの。びんぼう仲間の本は、なるべく新刊で買ってやらんとなぁ。ま、絶版本はしかたないから許しておくれ。
by taikutuotoko | 2004-12-25 15:46 | 本・雑誌・新聞・書店


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