裏面カバーの紹介文から一部を書き写す(という楽をする)と
〈雑誌ジャーナリズムと文芸出版の舞台裏に生きた「知の触媒」たち16人の仕事と人生を描いた、アメリカの名編集者列伝。〉
『アメリカの編集者たち』(新潮文庫/常盤新平著)
を読んだ。雑誌連載が一九七七~七九年。単行本(集英社)が一九八〇年。で、この文庫が一九八六年に出ている。
『平凡パンチ1964』(平凡社新書/赤木洋一著)
にも登場する清水達夫さんが、解説。
なにせぼくは、外国の文学やら雑誌には無知なもので、この一六人のうち、『プレイボーイ』の創刊者ヒュー・M・へフナーくらいしか知らなかった。
ただ、登場する作家や作品、雑誌は、ぼくでも知っているような有名な名前がおおく出てくるから、興味さえあればよく知らなくても興味ふかく読めるし、くわしいひとならもっと愉しめるはず。
ちなみに、その一六人は(目次から)
ヘミングウェイを操縦した編集者―マックスウェル・パーキンス
「エスクァイア」の創刊編集者―アーノルド・ギングリッチ
「ニューヨーク」の創刊編集者―クレイ・フェルカー
ハーパー・アンド・ブラザーズ社の名編集者―キャス・キャンフィールド
「リーダーズ・ダイジェスト」の創刊者―デウィット・ウォーレス
「モダーン・ライブラリー」からランダム・ハウス社へ―ベネット・サーフ
オニール、フォークナーの担当編集者―サックス・カミンズ
「コスモポリタン」の編集長―ヘレン・ガーリー・ブラウン
「マドモアゼル」の編集長―ベッツィー・ブラックウェル
「ニューヨーカー」の創刊編集者―ハロルド・ロス
「ニューヨーカー」の二代目編集長―ウィリアム・ショーン
ボブズ・メリル社を再興した編集者―ハイラム・ヘイドン
スタインベックの担当編集者―パスカル・コヴィチ
「プレイボーイ」の創刊者―ヒュー・M・へフナー
『ゴットファーザー』の担当編集者―ウィリアム・ターグ
「ヴァニティ・フェア」の編集長―フランク・クラウニンシールド
ではひとつ、すてきなエピソード、というより、〈できすぎた話が伝わっている〉というのを紹介しようかな。
「私はこの雑誌と結婚したんだ。雑誌のことしか頭にないんだ。」
とまでいった、「ニューヨーカー」のハロルド・ロスは、完全無欠な雑誌、まちがいのない雑誌をつくろうとした。が、その執念はちょっと〈度が過ぎていた〉らしい。
〈たとえば、「ニューヨーカー」の巻頭のコラム、「街の話題」にエンパイア・ステート・ビルディングのことが載ると、ロスは調査部に命じて、この摩天楼に電話をかけさせ、たしかに存在することを確認するまで満足しなかったという〉
そのほか
『文字の力』(晶文社/平野甲賀著)
を読んだ、というか、眺めた。
甲賀さんの描き文字装丁から五四点、それに未発表の架空装丁(乱歩の「屋根裏の散歩者」など)一二点をくわえた作品集。こうやってまとめて見ると、迫力あるなぁ。