著者の兄は、このブログではおなじみ、作家の小林信彦さん。
『イラスト・ルポの時代』(文藝春秋/小林泰彦著)
を読んだ。今月の新刊だ。
イラストレーターの泰彦さんが、一九六七~七一年に『平凡パンチ』に連載した「イラスト・ルポ」を中心に、べつの媒体に発表した同形式のものも収録。それにくわえて、あたらしく、当時をふりかえってのまとめの文章と、当時「パンチ」の編集者で「イラスト・レポ」の企画者だった石川次郎さんとの対談を収録している。
「イラスト・ルポ」は、読んで字のごとく、泰彦さんがじっさいに取材したものを、イラストと文により紹介する、というようなものだ。ばしょは、まだ身近ではなかったアメリカやヨーロッパの都市が主で、日本では米軍基地のあるところなどがおおい。「パンチ」の読者、つまり当時の若者たちにとって、それが流行・風俗の先端であり、本場なのだ。
エンピツ書き(?)のイラスト(今和次郎たちの「考現学」をおもわせる細かさ)の横には、本文とはべつの、手書きによる文がそえられている。
たとえば、ロンドンの、古着屋の主人の全身イラストのばあい。
「細いチェーンのベルト」
「店のベストセラー コットンのベルボトム」
「ネッカチーフをバックルで止めるのが好きと見た」
「店の人気商品 黒い革の半袖シャツ」
「私が着ているのもがはやるのですと豪語する」
と、これくらいの説明が、イラストから線をひっぱってきたところに手書きで書かれている。
うん、これはまさしく「考現学」だ。興味あるひとは、じっさいに手にとってみてくださいな。これは、とっても貴重な記録だ。
パリで、「ジバンシー」というブランドのアシスタント・デザイナーだったころの、(まだ有名でない)三宅一生さんの部屋の中、なんていうのもあるしね。
『回想の江戸川乱歩』(光文社文庫/小林信彦著)
に、「もう一人の江戸川乱歩」という、信彦・泰彦兄弟の対談が収録されている。すこぶるおもしろい。乱歩がオーナーだった『ヒッチコック・マガジン』の、編集長が信彦さん、アート・ディレクターが泰彦さんだった。
日本では使われていなかった「イラストレーション」ということばを、泰彦さんがこの雑誌で使うようにした、のだが、創刊号の目次には、「イラストーレション」になっている、という。それくらい、なじみのないことばだった、ということだ。
きょうは
『本とコンピュータ』(二〇〇四・秋号)
『平凡パンチ1964』(平凡社新書/赤木洋一著)
を買った。いま、『平凡~』の方を読んでいるので、つぎの投稿で紹介するつもり。『イラスト~』ともたいへんにつながりがある本だ。泰彦さんも登場しているよ。これも新刊。
なんだか、つめこみすぎたわりによくわからない書き込みになってしまったけれど、ご勘弁。次回は、赤木さんの本だ。