高円寺の古本屋「芳堂雅書店」の店主は、直木賞作家・出久根達郎さんだった。いまでは、もう店は閉めてしまったそうだ。ぼくは行ったことがなかったが。
『漱石を売る』(文藝春秋/出久根達郎著)
を読んだ。いろいろな新聞や雑誌に書いた、古本、というか、古本屋エッセイをあつめたもの。一九九二年刊。(文春文庫版あり)
表題にもなっている「漱石を売る」では、漱石の書簡を二通、手に入れる。ところが、手に入れてから気づいたのだが、このうち一通が「お悔やみ状」なのだ。漱石とはいえ、なかなか買い手のつかぬ品である。さて、どうしよう、というはなし。
ほんとうに、「本を売る」とは、どういうことだろうか。ま、これは書簡だけどね。
「十五万冊」というはなしが、おもしろい。
なんの数かというと、開店いらい、ずっとつけてきた、売った古本の冊数なのだ(こんな記録をとっておくのは、めずらしいことなのではないか?)。で、もうすぐ十五万冊。それを買ってくれたお客さんに、記念品をおくろうと、夫婦ははなしあって、『広辞苑』にした。いよいよか、というところで足踏みがつづき、そしてついにそのときが。さぁ、どんなお客だろうか……。
気になる方は、さがして読んでみてくださいな。
「不歎貧厨素、歎無買書銭」
これは、鷗外の漢詩のなかの語句だという。
どういういみかというと
「貧しきゆえに粗末な食事なのは悲しいとも思わぬが、本を買う金なきを嘆く」
ん~、そのとーり!