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職人の子。

 積ン読状態の小説を読むときというのは、なんらかのきっかけがあるもので、今回のばあいは、きのう読んだ司馬さんの本のなかにでてきたから、というわけだ。それに、きのう、エリセーエフという著者の本を古本屋で見つけて買ったのも、おなじ理由。
 
 きのうはなんだかケチをつけたような書きかたをしたが、こういうことがあるのだから、司馬さんの本は、やっぱりよいものだ、といえる。でも、ちょっと、しっくりこないんだよな。まぁ、いいか。

 『石版東京図絵』(中公文庫/永井龍男著)
を読んだ。永井さんは、神田生まれだ。

 裏面カバーに記された紹介をすこし書き抜くと
 「神田に生まれた職人の子の生涯を通して描く、懐かしい下町の人情と職人道。」
ということになるが、いやはや、せつない小説ですな。後半、ぼくは一度、泣いてしまったよ。

 さいしょは、下町のこども・職人たちなどについて書かれた文章の引用がおおく、エッセイのような感じのはじまりだが、それらの引用でふくらませた下町世界のイメージのなかで、こどもたちが動きはじめると、ぼくには「懐かしい」はずがないその世界が、ほんとうに懐かしくなる。
 
 といっても、その「懐かしさ」に浸っていればいいという小説ではない。

 なんとなくしあわせなこども時代(はやく働きにでるため、みじかい)というものは、その生涯からみると、きせきのようなものであるということを感じさせる。生まれたところ、つまり神田にしても、関東大震災、そして空襲により、まぼろしのようになってしまう。そのなかで、職人として生きるということも、この主人公たちには、すんなりいくものとはならないのだったが……。

 筋については書かないが、〈限定復刊〉というので、どうです、買っておいては。とてもいいですよ。
by taikutuotoko | 2004-09-15 23:02 | 本・雑誌・新聞・書店


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