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おもしろいんだけど。

 『本所深川散歩・神田界隈 街道をゆく36』(朝日文庫/司馬遼太郎著)
を、読みおえた。

 「散歩」といっても、書物・資料のうえを歩きまわった、という感じがつよい。
 
 読めばおもしろいし、たいへん勉強にもなるけれど、ここでの深川・神田というのは、けっきょくは、「司馬史観」といわれるような歴史語りの題材というだけなのではないか、という不満を、抱かなかったといえば、うそになる。

 なんだか、ケチをつけたような書き出しだけれど、いや、これを書かれるにあたって、どれだけ資料を読み取材されただろうか、ということをかんがえてみれば、さすが司馬さん、ということになるだろう。
 この「街道をゆく」シリーズなどは、日本にとどまらず、世界にまで、範囲はひろがっていたわけで、そのスケールからいっても、司馬遼太郎というのは、たいへんなひとだ。

 が、しょうじきにいって、司馬というひとの見るものは、ぼくにはおおきすぎる。この本のなかで、司馬さんが、こう書いている。

 「本と私の関係は、読むだけのことで、それも新聞を読むようにして本を読んできた。目的は、日本とはなにかを知りたかっただけのことである。」

 司馬さんほどの勉強熱心な方が、「日本とはなにか」を知るために、ぼうだいな本を読み、書いてきた、ということをかんがえれば、「国民的作家」といわれるようになるのは、あたりまえのことなのかもしれない。そのかわり、ぼくには遠いひとになってしまった。
 
 それに、新聞を読むようには、読むことができない本というものが、ぼくには存在するし、「日本」よりも、もっとつよくしりたい、もの、ひと、というのがあるようにおもう。

 司馬さんの本は、たしか十冊くらいしか読んだことがないから、これいじょう、なにかいうことはできないし、これまで読んだもののどれも、おもしろかったのはまちがいない。でも、おもしろい、といういじょうのものを、感じたことがないのが、ざんねんだ。

 で、この本はよくないのか、といわれれば、読んでソンはないとおもう。
 「本屋風情」「哲学書肆」「反町さん」「英雄たち」「三人の茂雄」といったところでは、本の街、神田神保町を語るうえでかかせないといわれる、反町・岡・岩波の三「茂雄」たちの、業績やひととなりについて、興味ふかいエピソードも豊富に、しるしてある。
 これだけ手軽に手にはいる本で、これだけの知識が得られるのだから、やはりよいものだ。それいがいのところも、もう、あたりまえだけれど、おもしろいよ。 
by taikutuotoko | 2004-09-14 20:49 | 本・雑誌・新聞・書店


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