きょう、いや日付はきのうだが、買った本は
『花迷宮』(新潮文庫/久世光彦著)
を、池袋の古本屋で。二六〇円。本のはなしは、これだけ。一冊も読みおえていないし、いま、ぼくはちょうど、帰宅したばかりなのだ。
なぜかといえば、東京ドームに、アメリカンフットボール・Xリーグ、「五洋建設パイレーツ」VS「学生援護会ROCBULL」を観にいったから。パイレーツのスタッフである友人から、チケットをもらったので、べつの友人にも声をかけ、はじめてのアメフト観戦ということになった。
ちなみに、この友人、この日の早朝、寝返りをうったさいに脱臼し、救急車のお世話になったという優秀な人物である。
試合後、三人で、飯田橋で飲み、電車もなくなったので、ぼくはひとり、歩いて帰ってきた。千代田区飯田橋から板橋区某所のわがアパートまで、約二時間でしかない。東京はせまい。
試合は、逆転につぐ逆転。われらがパイレーツが、逃げ切るかとおもわれたが、のこり〇秒で再々々々逆転のタッチダウン・パスがきまり、二〇対一七、ROCBULLの勝利となった。
ぼくが座った側のチームが負ける、という昨年からのジンクスは、野球・サッカーにとどまらないようだ。逆転負け率も、そうとうなものだとおもう。
アメフトといえば、チアリーダーだ。
友人のスタッフ氏は、しごとがあるから、観戦は脱臼氏とぼくのふたりだった。ぼくは、基本的なルールはしっているが、それぞれのプレーのいみがわかるほどではないし、脱臼氏はさっぱりだという。盛り上がった後半はともかく、前半はどうしてもチアリーダーの方に視線がいってしまう。スケベごころの抜けぬバカふたりである。
が、ふたりは気づいたのだが、パイレーツ側のチアは、どうもやたらとベテランくさいのだ。しかも、アメリカ~という感じの、はげしいダンスで、「フゥ!」とか「チャァ!」とか、とにかくそんな感じ。(いましらべたところ、チア暦十一年というようなベテランが、数名いた。やっぱり。)
ところが、遠くにみえるROCBULLのチアは、大学のチア部のような、肩にひとを乗せたり、飛んで回転したり、というアクロバットな感じで、なんだか若々しそうだ。しょうじき、衣装も、むこうの方がいいような……。
ふたりは無言の会話をかわした。
「友よ。はじめてのアメフトで、おなじところにずっといては、見聞もひろがらぬし、ものごとはいろいろな角度から見ねばならぬ。さいわい、全席自由である。あちらの方に、移ってみるのもいいのではないか」
「おお、友よ。そのとおりである。世界の混乱をみよ。敵とされる相手の立場を理解しないことが、どれだけの惨劇をまねいていることであろう。アメフトも、その例外ではないのだ。」
ふたりは、うなずきあい、腰をあげた。
そのときだ。
「よぉ!ここにいたのか。客がすくなくて、しごと、もうおわっちゃったよ。解説してやるから、いっしょに応援しようじゃないか。ほれ、ビール。」
背後からスタッフ氏の声がきこえ、われらはちからなく腰をおろした。そのビールは、苦かった。