「ことばには、意味がある。」
これは第六版『広辞苑』(岩波書店)のコピーなのだが、「あっそう」ってくらいの、どうでもいい宣伝文句だ。そりゃ、意味はあるかもしれんが、言葉は使いようだぜ、とでも言いたくなる。
若きころの元木昌彦が、週刊誌で山口瞳を担当した。山口がゲストと競馬の馬券対決をする連載だ。ところが或る時、当時まだ珍しかった万馬券を編集者の元木が的中させてしまった。高額な配当金に戸惑って使い途を相談する元木。山口はこう答えた。
〈「まず背広を作ったらどうだろう。そしてその背広の内ポケットに馬の名前を入れたらいい。それと持っていなかったら、広辞苑を一冊買いなさい」〉
(『競馬必勝放浪記』(祥伝社新書/元木昌彦著)
大穴馬券で背広をつくった男の例には、「マサタカラ」と刺繍をいれた寺山修司がいるそうだ。勝ち馬の名を広辞苑に箔押しした人がいるかどうかはわからないけど、あまりシュミがよくないかしら。
それにしても。ブランド力がある、というのは、こちらからお願いしなくても誰かが素敵なコピーをつくりだしてくれる、ってことかもねぇ。