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 〈「あんたは施主だけど、働いているときはあくまで俺の手伝いだ、俺の指示に従ってくれよ。俺はあんたを名前で呼ぶが、あんたは俺を棟梁と呼べ。日曜と旗日は休みだ。あと、遅刻はするなよ。一ヵ月近くだが、よろしく頼むぞ」〉

 シルバーセンターからやってきた大工は、施主の狩野さんにそう言って、つるはしを渡した。国立から高円寺と移転してきた「コクテイル」が、こんどは同じ高円寺あづま通りに店を構える。狭いなりにお客もついていたけれど、あそこを出なさい、世界が狭くなると常連に諭されての移転だ。これまでは手作りだった。金はなくても熱い思いはあって、とにかくはじめた国立の店。小さくても何かを発信していく試みをつづけた高円寺のはじめの店。だけれど、こんどはもっと作りたい店の形が見えてきている。お金はなるべく抑えながら、ある程度業者職人の力を借りて現実化していくのだ。「コクテイル」という店の膨らみが、狩野さんの中でそういう段階にきていた、そんなときの移転だった。「棟梁」に連れられて寿司屋、若いころは茶室専門の大工になりたかったという棟梁にこう言葉をかけられる。「あんたは若いんだ、後悔だけはするなよ」。

 『高円寺古本酒場ものがたり』(晶文社・狩野俊著)
を読みおえる。ブログの日記と同業者の聞き書きに挟まれた、書下ろしの狩野さんとコクテイルの「ものがたり」が、とにかく読ませる。すんなりとすすんでいける人ではない、どうしたって躓きもがき呑んだくれてしまう。だけれども不思議な魅力と、とにかくすすんでみる力があって、さまざまの人たちをその店に引きつけ、そのつながりの中から生まれた何かを外に発信していくのだ。


 金曜土曜、神保町田村書店」「小宮山書店」の一〇〇円均一で
 『成城だより』(文藝春秋/大岡昇平著)
 『芸能界本日も反省の色ナシ』(はまの出版/ダン池田著)
 『文士の時代』(朝日文庫/林忠彦著) 
 『幕末・維新』(岩波新書/井上勝生著)
 『自虐の詩 上』(竹書房文庫ギャグザベスト/業田良家著)
を買う。「東京堂書店」で配布中の『週刊 3階』、魚雷さん題字の三号はリトルプレス特集。外市でもらっておいたのだが、石田千さんの『週刊 千階』も挟み込まれていてたのでもう一枚もらう。買い忘れていた『彷書月刊』九月号を。「三省堂書店」で
 『雑談王 岡崎武志バラエティ・ブック』(晶文社/岡崎武志著)
まで。そう、給料が出たんですね。

 池袋に出て「ジュンク堂書店」、土曜には坪内祐三さんと誰かのトークをやっていたようだ。
 『おこりんぼさびしんぼ 若山富三郎・勝新太郎無頼控』(廣済堂文庫/山城新伍著)
を坪内さんが週刊文春で取りあげていたのを思い出し、古本屋で出会いにくそうだから新刊で買っておく。
 読み出した『自虐の詩』がおもしろく、「下」も買わねば!と地下売り場へ。うーん、マンガ売り場がまったくわからん。しばらくうろうろしたのだが見つけられず。本にくわしくない人が本屋に来たら、全部がこんな感じなんだろうなぁ。店を出て喫茶店で
 『自虐の詩 上』(竹書房文庫ギャグザベスト/業田良家著)
 『コーヒーもう一杯』(エンターブレイン/山川直人著)
と、J堂でもらってきた「定本 久生十蘭全集」(国書刊行会)のパンフを読む。
by taikutuotoko | 2008-09-14 18:00 | 本・雑誌・新聞・書店


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