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しらない世界をのぞいてみる。

 『蛇のみちは 団鬼六自伝』(幻冬舎アウトロー文庫/団鬼六著)
を読んだ。団さんは、SM小説の大家で、なにかと話題の映画『花と蛇』の原作小説もかれの作品だ。

 といっても、ぼくはとりあえず(いまのところは?)その方向に興味があるわけではないので、その手の小説を読んだことはない。だけど
 『真剣師小池重明』(幻冬舎アウトロー文庫)
という、とんでもなくおもしろい一冊には、まったくやられてしまった

 真剣師とはいわゆる賭け将棋をするアマチュア将棋指し、なのだけれど、これがプロにもつぎつぎ勝ってしまうくらいつよいのに、将棋いがいはどうしようもない破滅型のおとこなのだ。団さんは専門雑誌のオーナーをやっていたほどの将棋好きということで、小池重明とふかくかかわってしまったことから、うまれた本だった。

 そうそう、『蛇のみちは』のことを書かなければ。この自伝、ハンパじゃないよ。

 相場くるいの父親、これがまたとんでもないエピソードばかりなのだけれど、その父をモデルにした小説が賞に入選したのをきっかけに、団さんは上京する。小説がうれだして、金がはいりだし、そのいきおいで女に店をもたせた、というところから、気運は急降下。
 このあとの団さんが、どういう仕事をわたりあるきながら、SMの世界とのかかわりをふかくしていくかは、ぜひ読んでほしいなぁ。

 団さんの語り口にはなんともいえないユーモアがあって、いっきにいけてしまう。やくざからいきなり洋画のアテレコ担当ディレクターとなってしまった男と組まされたときのエピソードなんて、声にだしてわらってしまったもの。たこ八郎との同居生活や、「七人の侍」「生きる」などの黒沢作品でプロデューサーをつとめた人物が、どんなかたちで団さんのまえにあらわれるのか、なんていうことも、興味ふかい。

 もちろん、SMにたいする団さんの考え方もしることができる。まったくマニアックなものでしかなかったSMが、いまではかるい遊びくらいなノリでも語られるようにもなったのは、団鬼六という存在をぬきにしてはありえないのだから、読んでソンはない。
 
 じぶんの常識というものに、なにかしらの刺激をあたえたいのなら、多様な性のありかたをしることのできる本を読んでみることを、ぼくはおすすめする。
by taikutuotoko | 2004-07-23 23:38 | 本・雑誌・新聞・書店


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