いにしえ文庫。

 「あ、あの、ここって実店舗ですか?」と思わず訊いてしまったのもムリはないはず。神保町「人生劇場」の裏手あたりにある路地の一本を歩いていると、「いにしえ文庫」なる小さな看板を発見。おおっ、と建物の中を覗いてみたのだが、たしかに本棚に囲まれてはいるものの、おそろしく狭い。しかもすぐに机があるので、それこそ目録販売専門の古本屋の事務所かなにかではないのか。そういえば看板も、看板というより表札に近い。

 「え、いや、店だよ。古本屋。どうぞどうぞ」、店に入るというよりは知り合いの部屋に招き入れてもらうような感じで中へ。「ここ、新しいんですか?」「うーん、四月ンなってからかなぁ。いつも開けてるわけじゃないしねぇ」。「まぁ、雑本てやつだよね。見てってよ」、それなりの年齢のインテリ風の店のオヤジはなかなか話好きらしい。
 本は、芸能モノや戦後風俗、レトロなサブカルといった感じ。本棚の一部は可動式で、奥には古い子供雑誌なども見える。いや、これはなかなかおもしろい品揃え。「ただ事務所にしようかって思ったんだけどね、ひと、それなりに通るから、シュミで古本売るのもいいかなってさ」。話をしているとよけいに店というより誰かの書斎、の感覚だ。

 「あれ、退屈さん!」、入口から声をかけられて振り向くと、おおっ!「古書往来座」元アルバイトのコミネ君ではないか!どーしたの?「いえ、ひぐらしに寄ろうかと…、で、前を通ったら中に退屈さんが…」、コミネ君もここは初めて知ったようだ。
 お客が二人になって、それでもう店は満杯の感だが、店主はいろいろと本を見せてくれる。「これはパンパンの英会話本でね、それからこれはまぁ昔の地下本だよねぇ、著者が、“小栗風荷”なんてね」

 話を聞いてみると、店主は以前は某大手出版社に勤めていたそうだ。ここは、元々「書肆ひぐらし」の倉庫だったところ。神保町一の十八。生まれもこの辺りなんだって。
 『キャビアのお茶漬け』(講談社/藤村俊二著)
を購入、一五〇〇円。「いやぁ、まだやってるようなやってないようなだから」というのがよくわかる、レジもなければトクベツ釣銭を用意しているわけでもないようで、自分の財布からお釣が出てきた。あは。また、来ますね、と挨拶して、おなじく一冊ご購入のコミネ君といっしょに店を出る。

 コミネ君せっかくなんで、メシを食っていこう。てんで、貧乏な若者らしく揚げ物カレーの店「まんてん」へ。五〇円上がったカツカレーを食う。最近ドウよ?なんぞ話しつつ。メッタに下の年の人間とメシ食うこともないからねぇ(たまには、と二人分払う)、イイ気分で別れた。きょうはおもしろい帰り道だったな。


 『文学がこんなにわかっていいかしら』(福武文庫/高橋源一郎著)
 『映画×東京とっておき雑学ノート 本音を申せば』(文藝春秋/小林信彦著) 
を読み、いまは丸山あかね『耳と文章力 上手な文章を書く秘訣』を。文章術本というより、文章力って?というノンフィクション本という感じで、なかなかおもしろい。

 『3時間で読める!ビジネス新書900冊』(光文社ペーパーバックス/新書マップ編集部編)
を新刊本屋で買って帰る。
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by taikutuotoko | 2008-04-25 21:36 | 本・雑誌・新聞・書店


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