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ヨーダだよー、だ。

 〈私だけやなしに、溝口さんにいじめられて、トンカチ持って、「溝口殺して俺も死ぬーっ」って言うて、溝口さんがセットの中へ逃げるのを追っかけてる小道具の人なんかありましたね。それがなんで言うたら、深夜、おでん屋のシーンを撮っていておでんの中にたこがあらへん(笑い)、そのたこをどこかで仕入れてこいと言われた。「今行っても、どこにもおでんあらしません」、「そんなことありません。京極あたりへ行けばまだおでん屋がおるから、そこで買うてきてくれ」、そんなんでね。それで帰ってきて、「行ったけどこんな足しかなかった」、「こんな足では味がでません、もっと太ったのをなぜ買ってこない」、それでカーツときて、トンカチ持って追っかけた。〉

 『スクリーンに夢を託して 映画と時代と私』(ブレーンセンター・なにわ塾叢書/依田義賢 講話)
を読んだ。八八年刊。
 溝口はもちろん映画監督の溝口健二。依田さんは溝口映画などで〈夢の中で溝口の首締め〉ながら(笑)優れたシナリオを書いたひと。「SW」のヨーダのモデルだという話も有名。

 講和を本にしたものなので、依田さんの絶妙な語りが生きている。(以下、「山田」は本講和のコーディネーター・山田幸平さん)。

〈依田  (略)前にもお話しかたとおもいますけども、日活というのはシーン構成なんですね、松竹はカット構成。それからカメラの調子もね、日活は非常に暗い調子なんです。これはドイツなんです。そういう流れがそのまま影響を受けて、日活のカメラにきているわけです。たとえば三木稔さんとかね。またそれを学んでいるのが宮川一夫なんです。
山田   それじゃ先生、日活の内田吐夢の『土』という映画がありますね、このカメラの技法と、宮川一夫さんのカメラと関連はあると見ていいいですね。〉
 (略)
〈依田  それの影響を今どのように見ることができるかということをお考えになったら、黒沢明を見ればいいわけですよね。ところが黒沢さんはそのままのものじゃないわけです。東宝は松竹からも監督行ってますわね何人か。だからそれを合わしたような感じになってくるわけです。(略)
 その点松竹の蒲田、大船、これは全体的に日常的なワンカットシステムのやり方ですからね、もうこれは山田洋次までそうです。
山田   その頂点が小津と見ていいですね。
依田   それはもう頂点は小津です。だから小津さんの作品をお茶漬けの味なんていうけど、うそですね、バタートーストですよ。それで溝口はドイツ式の握り飯ですよ。そういうふうに考えてもらうとちょっと感じがわかってもらえると思います。〉

 長くなりすぎたが、どうです、この感じ。いやもう、キリがないくらい、どこ読んでもおもしろい。こんなことも書いてある。
 〈ミス・ワカナっていう人がいたでしょう、あのワカナ・一郎の最初のころのレコード残ってますけどね、その漫才みな私がかいていたんです。〉 へえへぇへぇ。

 いちばん重要なのは、この本、ジュンク堂書店のサイトで検索してもかからないのに、いまでもちゃんと買えるってこと。気になったひとは、版元の「ブレーンセンター」に直接注文してくださいな。 

 『そうではあるけれど、上を向いて』(講談社文庫/常盤新平著)
も読みおえた。えっと、先週の土曜日に神保町に行ったときに買ったのだった。書くの忘れてました。二一〇円。えっと、長島書店だったかな。


 足首から下、右に三ヵ所、左に五ヵ所、蚊に刺されている。両中指やられている。信じられないくらい、カユイ!あぁぁぁぁぁぁ……か~ゆ~い~!
by taikutuotoko | 2005-08-04 22:22 | 本・雑誌・新聞・書店


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