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キテレツ古本&ルパシカ。

 〈それなのになんで手を伸ばしたのかは、はっきりと説明できない。長年古本漁りをしていると、アヤしい本の発散する匂いというか、オーラというか、そういったものが嗅ぎ取れるようになる。そのときも何かを感じたのだろうか。〉

 『奇天烈!古本漂流記』(ちくま文庫/北原尚彦著)
を読んだ。今月の新刊。単行本は九八年刊。今月もちくま「古本」文庫に新たなラインナップが加わったぞ。こんどはヘンテコ・キテレツ・妙な本のオンパレードだ。

 それにしても、世の中には妙な本がいろいろあるものだ。絵本ではターザンがインディアンだったり、アメコミではムキムキなスーパーヒーローになったレー○ン大統領が活躍したり、ミャンマーの偽「ドラ○もん」には触角が生え、某国の金○成主席が語ったという物語はヴェルヌの『十五少年~』にそっくりで……。

 自分で読むには少々ツキアイきれないようなキテレツな本たち。そもそも、そんな本を手にすることがまずないもの。そんなアヤしい匂いのする本たちを発掘し、ツッコミをいれながら内容・ストーリーを紹介する。いやはや、いやぁ、どれもトンでもなくて可笑しい。
 清水正二郎(胡桃沢耕史)の『アメリカ情痴物語』ならぼくも見かけたことがあるが、じぶんで買おうとは思わないものなぁ。

 『思想のドラマトゥルギー』(平凡社/林達夫・久野収著)
も読んだ。って、ずいぶんと雰囲気のちがう本だなぁ。七四年刊。
 じつに濃い対談本で、まぁ正直いえば、ぼくの乏しい知識ではほとんどワカラン(とくに演劇関係)のだけどもね。でも、スコブルおもしろい。

 むずかしい話題はよしといて。こんなところを。

〈林  (略)大正中期は、大学生は角帽こそいくらかかぶらなくなっていたが、それでもまだほとんどがいわゆる金ボタンのサージ服で(略)。僕はあの「金ボタン」なるものが虫が好かないでね、洋服の時は日本ではまだ誰も着ていない(と思った)ルパシカを作って、そいつを着てやろうと思いつきました。(略)僕の周辺でこの名案(?)がちょっとしたブームを呼んで、一時は谷川徹三はじめ、仲間の四、五人が着ていたでしょう。(略)学校御用の洋服屋へ雑誌から切り抜いたゴーリキーの写真を持って行って、“この通り作れ”……なにしろ、そのぼやけた写真が唯一のたよりでしょう。仕立工泣かせでしたが、そのまやかしのルパシカ着て、教室へ出たり、繁華街をのし歩いたり、ちょっと粋で、ちょっと野暮だなんて思って、全くいい気なものでした。まさに山口昌男氏が看破した西洋的、いや西洋かぶれの知的「かぶき者」の練り歩きだったわけです。〉 

 この本に手を出したのも、その山口昌男さんの『「挫折」の昭和史(上)』を読んだからであります。
by taikutuotoko | 2005-04-10 20:41 | 本・雑誌・新聞・書店


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