「とんち教室」の時代。

 〈「猫の足音をラジオで聞かせてくれ……といわれたら、さて、どうするか」〉
というのが、この人気番組の企画のスタートだったのだそうだ。
 
 『『とんち教室』の時代 ラジオを囲んで日本中が笑った』(展望社/青木一雄著)
を読んだ。一九九九年刊。
 「とんち教室」というのは、NHKで放送されていたラジオ番組で、一九四九年から二〇年ほどつづき映画にもなった長寿人気番組だそうで。著者は、ずっとその司会をつとめたアナウンサー(故人)。

 「教室」っていうくらいだから、呼び方も学校風。司会が「先生」なら、回答者は「生徒」、聴取者は「PTA」、地方公開録音は「修学旅行」とまぁ、いってみりゃ学校ゴッコ。
 やることといえば、なぞかけやら折込どどいつといった言葉あそびで、個性的な「生徒」たちの「とんち」のきいた名答、珍答に、さぞや「ラジオを囲んで日本中が笑った」のでありましょう。(ぼくは知らないけどもねぇ)

 なにせ長寿番組だけに「生徒」の顔ぶれが多彩だ。石黒敬七、長崎抜天、春風亭柳橋、玉川一郎、正岡容、平野威馬雄、宮城まり子、三益愛子、山岡荘八、清川虹子、野坂昭如の父・相如なんていう名前まで。その他にもまだまだいるが、きりがない。

 「先生」や「生徒」たちのエピソードや、その回答も愉しいけれど、「PTA」たちに出された「宿題」の答案には、ユーモアのなかに世相というか庶民の生活がよぉくあらわれていて、なかなかおもしろいものがおおい。
 本書はそれらをつぎつぎ紹介していくことで、「とんち教室」の放送されていた時代、とくに初期の日本中がまだ貧しかったころの実感的な生活、あるいはいつの時代も変わらぬ庶民的な感覚を知ることができる、そんな内容の本だ。

 どんな時代でも、酒好きは呑まなきゃやってられない。だものだから、カストリ焼酎、しまいにゃ工業用アルコールにまで手がのびる。
 〈「メチルアルコールの混じった酒の見分け方」という問題を出したら
  ○コップに注いだときドクドクドク……と音がしたら入ってる。よい酒ならトクトクトク……と濁らない音がする。
と、語呂合わせみたいな答えが出たが、
  ○呑んで翌朝目が覚めなかったらメチルアルコールが混じっていている酒  石黒敬七
と物騒な答えも現れた。なお、メチルは「目散る」「命散る」などの宛字も行われた。〉

 折込どどいつ、というあそびは、たとえばお題が「ほおずき」なら、こんな感じ。
 〈○んのちょっとの世辞がもとでるずるここまでた二人〉
 「たなばた」では。
 〈○しになるようでらないものはナナを五本べた夢〉
 こんなのは、いまちょうど旬だ。お題は「ツイスト」。
 〈○銭出すときゃそいで出すなかして眺めよクと見よ〉

 それにしても、この青木センセイ、あしかけ二〇年皆勤賞だったというから、たいへんなものだな。 
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by taikutuotoko | 2005-01-20 03:32 | 本・雑誌・新聞・書店


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