『おたくの本懐 「集める」ことの叡智と冒険』(ちくま文庫/長山靖生著)
を読んだ。今月の新刊。
元は著者初(一九九二年刊)の単行本だという
『コレクターシップ 「集める」ことの叡智と冒険』(JICC出版局)
だけど、著者自身の古本と生活をめぐる思い出を綴った補章「コレクターはどうして書き手にもなったのか」が加わっているので、本書も、ちくま文庫お得意の古本モノにふくまれるといえる。解説は紀田順一郎さん。
ちくま文庫の新刊には
『古本生活読本』(岡崎武志著)
もあるので、ぜひともいっしょに買おう。
本書では、元祖おたくというべきコレクターたち、利休や江戸時代の大名から、柳田国男・南方熊楠・澁澤龍彦・荒俣宏といったひとたち、一介のサラリーマンにして大コレクションをつくりあげた今西菊松、戦時中にシンガポールのラッフルズ博物館のおしかけ館長になってそのコレクションと研究をまもったという徳川義親、あるいは貴重なコレクションづくりに貢献したパトロンたちなどなどが登場する。
そういった人物像とコレクターシップを見ていくことで、世間では偏見をもたれがちな「モノを集める」という行為を見つめなおす。
〈ここに書いたのは、おたく的な人間、おたく的な「知」が、社会にとってどのような有用性を持っているかについてだった。それは同時に、どうすればおたく的な人間が「社会化」できるかを探る無意識の試みでもあるし、それなりに「おたく」な仲間たちへの処方箋になっていると思う。〉
いわゆるアキハバラ的な「おたく」文化には疎い、というか正直苦手だが、「おたく」的な人間であることはまちがいないと、ぼうもいちおう自覚している。(でなきゃ古本なんて買いませんナ)
「おたく」論の本には、「おたく」に妙にいろんな意味をもたせるものがあって、あまり馴染めないのだけど、本書は穏健といおうか大人といおうか、じつにしっくりくる。オススメだ。
「学会と文壇のはざまを滑走するコレクターシップの系譜」なる図がまた、おもしろいぞ。