人気ブログランキング | 話題のタグを見る

続・「いとこい」漫才の魅力。

 こいしさん、九〇歳くらいまで漫才やりたいっていっていたのにな。いとしさんが亡くなってしまって、ほんとうに残念。歩けなくなっても車椅子で、パラリン(ピック)漫才の元祖になろう、っていっていたのに。

 『浮世はいとし人情こいし』(中央公論新社/夢路いとし・喜味こいし著)
を読んだ。読売新聞の大阪・兵庫版に連載されていた聞き書きなどをまとめたもので、二〇〇二年刊。おふたりの会話形式で、もう漫才みたい。
 
 ゆうたさんの稀覯LOG(一〇月一四日)で紹介されていたので、すぐ注文して買った本。税込み、一三六五円也。いとこいさんは好きだけど
 『いとしこいし 漫才の世界』(岩波書店/喜味こいし・戸田学編)
は高くって、というひとにオススメだ。

 こいしさんの広島での被爆体験、ふたりが名古屋で芝居中に起きた阪神淡路大震災(家族、まち)のこと、病気のこと、など、たいへんな内容のところもあるが、そのなかにもちょっとおかしなエピソードをまじえたりで、おふたりの会話は、漫才そのもののように軽妙でほのぼのとしている。もちろん、ほとんどは気楽に読める内容だ。秋田實さんの台本づくりのはなしなんていうのも、興味ふかいぞ。

 性格、趣味のちがいもおもしろいところだね。
 
 (電子レンジが使える)いとしさんは、子供のころから本がすきで、『新青年』などに親しみ、その後はSF・推理小説の翻訳本をたくさん読んだ、という。風太郎忍法帖も好きだった。たしかに、いとしさんの方は、モダンな感じがしたものな。
 
 たいして、(電子レンジにはさわらない)こいしさんは、時代小説、山本周五郎。スポーツをやるのも好き。野球チームをつくっていたほどだ。
 
 その野球チームにいた堺駿二さん(堺正章さんの父)のエピソードが、ちょっとおもしろいので引用してみよう。
 〈こいし  ショートですわ。背の小さい、ちょろちょろと。プレーボールって、ぱっと構えた瞬間、ここ(股)に前掛けが出まんねん。
 いとし  あはは。股のとこにね。
 こいし  これがあるから、エラーとかないって。やったらいかんって、決まりはないわけや。相撲の土俵入りとおんなじや。これはウケたね。人間的にええお方やし、みな文句、いいませんがな。〉

 いぜん、「いとこい」漫才の魅力。というのを書いたので、興味ある方はどうぞ。
by taikutuotoko | 2004-10-20 00:10 | 本・雑誌・新聞・書店


<< 坂崎さんの新刊、もう一冊あったのね。 バスにゆられたい。 >>