〈いつにかわらぬ人間の暮らしむきのなかに、犯罪は時代の刻印、または犠牲としてあらわれるのかもしれず。やや大仰ながら、そこに今日の民衆小史がある。それを私は書いているつもりでした。〉
『犯罪専科』(河出文庫/小沢信男著)
を読んだ。六〇年代中盤~七〇年代中盤までの事件をとりあげた、じつに読ませる犯罪ドキュメント。古本屋でなら、よく見かけるはず。
収められた十篇のなかでも印象的なのが、「フーテン・マコの短い華麗な生涯」。
そのなかで、「喜願千人斬り―記録の記録」という小見出しのついた段がある。ここでは、本篇の主人公(被害者)であるマコが、生前、小沢昭一さんと対談したさいに
「千人斬り―という言葉があるでしょう。もうあなたなんか近いんじゃないですか。」
と問われているのだが、小沢信男さんの近著は、この「千人斬り」だ。
『悲願千人斬りの女』(筑摩書房/小沢信男著)
は、中条省平さんが、書評で
〈一度読みはじめたらやめられないほど面白い。〉
と書いていたもので、いまもっとも気になる一冊。
松の門三艸子という、芸者、花魁、そして歌人としても有名な女傑が、この表題作の主人公だそうだ。『犯罪専科』にも、ちらと出てくる。そのほか、木村荘平(木村荘八などの父)、芦原将軍、稲垣足穂が主人公の各篇も収められているというから、たまらないじゃないの。
ん~、こうなったら我慢できない。オンライン書店に注文だしちゃったよ。