色川さんの小説が読みたくなって。

 ひさしぶりに色川武大さんの小説が読みたくなって、ダンボールをさがしていたら
 『離婚』(文春文庫/色川武大著)
がまず出てきたので読んだ(二度目かな)。直木賞受賞作(一九七八年)。「離婚」のほかに、おなじ〈すみ子モノ〉の「四人」「妻の嫁入り」、そしてその前段部分にあたる「少女たち」がおさめられている。

 誠一とすみ子は離婚した。
 すみ子は、はじめて会ったとき
 〈「ねえ、あたし、お妾にしてくんない」〉
と、いった。ふたりは独身だったというのに。そんな、かわった女性との結婚生活は、「離婚」という決着をみた、はずだった。それからはじまる、同居生活。ま、そういうはなし。

 べつの本(『ばれてもともと』文藝春秋)によると、この小説に、色川夫人は〈へそをまげた〉のだそうだ。誠一はどうみても色川武大だから、これを読んだひとはすみ子はあたしだとおもうだろう。〈あたしをあんなにひどく書いて、陰険だ、ひとでなしだ。〉と。だから、〈ディテールは活用しているが、モデル忠実小説ではないのである。〉と、色川さんもことわっている。

 「離婚」は、色川さんの作品のなかで、とくに好きなものか、といわれるとそういうわけではないな。
 『怪しい来客簿』(文春文庫)
などの方が、好みだ。

 で、つぎに、なにを読もうかとかんがえて、色川さんの、さいしょの文学賞受賞作である「黒い布」を読んでいないことに気づいた。いや、ほかにも読んでいないものはおおいのだけど。

 都合よく、いぜんタダ同然で買ってきた古雑誌のなかに
 『中央公論』(一九六一年十一月号)
があった。これに、第六回「中央公論新人賞」受賞作として、「黒い布」が掲載されているので、読んでみた。ちなみに、選考委員は、伊藤整・武田泰淳・三島由紀夫。また、谷崎潤一郎の「瘋癲老人日記」第一回も、この号に掲載されている。

 あまり読む機会もないであろう作品だから、筋を紹介しても仕方がないので書かない。

 主人公である老人、草弥は、退役軍人で、恩給生活者だ。これは、色川さんの父親もそうであり、息子の好吉は賭博麻雀で警察のお世話になったあとで業界紙やらのしごとにつくのだから、じっさいの父親と武大さんがモデルなのだろうか。
 
 「黒い布」というのは
 〈眠るとき、草弥はいつも眼の上に、黒い布きれを縛りつける。〉
という、その黒い布きれ、のことだろう。

 なにを書いていいかわからないから、「選考座談会」で三島由紀夫が
 〈つまり父性とか、日本伝来の男性的道徳とか、そういうもののこりかたまった男が、自分の信じた道徳自身に復讐される話だという風に読んでいる。〉
といっていることを引用して、その雰囲気を伝えるだけにしよう。
 「黒い布」は、たぶん、色川さんの全集に収録されているだろうとおもう。

 さいきん講談社文芸文庫で再文庫化された『狂人日記』は、読んだことがない。あの文庫だから、値がはるけれど、買わないとな。
 ぼくは麻雀がわからないから、阿佐田哲也名義のものはほとんど読んでいない。なんとなく、それがもったいない気がする。

 和訳太郎日記
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by taikutuotoko | 2004-10-04 23:22 | 本・雑誌・新聞・書店


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